今回は今までとはちょっと違う「ピックアップ魂」を。公開中の「踊る大捜査線THE FINAL」に出演している3名にお越しいただき、役者とは?」「芝居とは?」をお酒を交えて大いに語っていただきました。若手役者の方々にも参考になるヒントが満載です。

番外編「ピックアップ魂スピンオフ」をお楽しみください!



ピックアップ魂 vol.6
中野剛・西ノ園達大・竹井亮介篇


劇場でしか得られないもの

― 本日はよろしくお願いいたします!

3人:よろしくお願いします。自分たちでいいの?って感じはしていますが…。

―いえいえ、キャリアを重ねられてきたみなさんに、飲みながら大いに語って頂きたいと思います。本日は下北沢の居酒屋さんに来ていますが、みなさんにとって下北沢は劇場などでなじみ深い場所ではないでしょうか。

竹井:変な場所ですよ。小さい街なのに、若者とかがウヨウヨいるでしょ(笑)。劇場がなかったら、まず来てないと思います。でも20年近く通ってきたから、今はなじみ深い場所になりました。

 

西ノ園:下北沢というのは、OFF・OFFシアター、ザ・スズナリ、駅前劇場、本多劇場といった登竜門的劇場がひしめき合っているところで、演劇の聖地とも言われているんです。それぞれキャパが異なっていて、OFF・OFFシアターなら100人入るか入らないか、本多劇場なら400名弱など、段階がある。一度駅前劇場などでやると、「次はザ・スズナリを目指そう!」といったふうに、劇団自体をステップアップさせてくれるようなところも、下北沢の魅力ですね。

中野:逆にここ(この劇団や集団)はペイ(集客)出来ないな?となると、スズナリに戻されたりすることもあるよ。それは有名人プロデュースであってもね。それなりにシビアだよ。 

    

西ノ園:本多より上になると商業劇場なんですよね。舞台のTPOというか、OFF・OFFなら結構演出家の好きなことをやらせてもらえるようなイメージがありますね。例えば、今はどうかわからないけど、役者が全裸になっちゃう芝居も観たことあったような。でも、パルコ劇場とかだと、たくさんのスポンサーさんも入ってるだろうし、必然的に大人の舞台になっていくのかも。パルコでやってからあえてOFF・OFFに帰るような有名な役者さんもいますしね。そういうのは、役者としての心意気みたいなものも伝わるし、お客さんも間近に観れて、すごくおもしろいですよね。

―みなさんは小劇場を経験されていますが、そこで学んだ強みなどはありますか?

竹井:大劇場でないと学べないことももちろんありますけど、下北みたいなところの小劇場でやらないと得られないこともありますね。

中野:うん、あるある。

西ノ園:カンパニーの中が濃密になるし、それがいいんだと思いますね。

竹井:特に大きな舞台だとメインどころの役のみなさんをワキで盛りたてながら、必要なところでは自分も立てることを考えないといけない。大きな輪の中で、自分がどこらへんにいいればいいのかを探るような感覚ですよね。

西ノ園:小さいハコだと「自分が自分が!」というのも、ある程度オッケーのような気がします。役をもらっている以上、出るところは出て控えるところは控えるという、そのバランス感覚を付けることも、いろいろな劇場を経験する良さかもしれませんね。

 

―今だから言えるような、舞台ならではの失敗談があれば教えて下さい。

竹井:舞台上で台詞がすっとんで、その台詞にいく前のところを何度も繰り返して言ってみたりもしましたが……

中野・西ノ園:はいはいはい(笑)

西ノ園:僕はハケとちりをしたことがあります。キスすると時間が巻き戻るという設定の話で、何日も本番をしていたせいか、ハケたまま相手役を舞台上に一人置き去りにしてしまった。そいつは2分間独り芝居をしていたよ(笑)。あれは本当に申し訳なかった。。。

中野:ハハハ。ありすぎるよね。出とちって、ゆっくり来るべきところを走りこんだり、楽屋の便所スリッパだったり、時代劇なのに首にタオルかかってたり・・・たしか、むやみに雄たけびをあげて、吹き飛ばして何事もなかったようにして、乗り切ったぞ。(笑)やりなおすわけにはいかないしな。

西ノ園:監督が「カット」をかけるまでは芝居を続けるのが鉄則なんです。舞台監督の「やめ」が出ない限りはつづけるのが暗黙の了解。例えば舞台裏から音がしちゃって「なに今の音?」「知らないよ」というアドリブを入れて演技をしてもいいし、続けないのはご法度なんですよ。

 

次につながるオーディションを

― 舞台から映画・テレビなどに活躍の場を広げられてきたみなさんですが、オーディションの際に心掛けていることはありますか?

西ノ園:緊張することが大切だと思います。緊張感をどう楽しみに変化させるかと、その舞台に自分を入れることが大事。そこへたどり着くまではみんな違うでしょうね。スポーツ選手でも、イチローや松井(秀喜)なんかのようにルーティーンを作る人もいるだろうし、その日その日で気にしない人もいますから。

中野:それを「緊張力」と言ってた。それを持たずして挑めないね。先輩の井田國彦さんが、「陶酔力」とも言ってたな。

西ノ園:いろんなオーディションに20何年行ってきた身として、極論ですが、オーディションは一生懸命やっちゃいけないものです。「このオーディションに自分の全てをかけよう!」とかはダメですね。

竹井:わかります!

西ノ園:オーディションに監督さんがいらっしゃらないとか、いろんな状況はありますが、僕は受からせていただいたものと受かったものは相性だと思っています。いくら挑んでもハマらないものはハマらない。商品があるものだから、100%演技力を見ていただいているわけでもないし、そこにガチっと合うと受かる。それは理屈じゃない。ただ、挑む際のモチベーションは伝わって、次につながると思う。

中野:相手がADさんで、棒読みにまともなセリフをかえして合わせるって難しいときもあるし(笑)

竹井:僕は見た目とかキャラクターに助けられている部分は多いっていう自覚があります(笑)。今はそれでいいんだと思えているのですが、少し前まで、わりとどんな役にでもはまるような感じの人に嫉妬していた時期があって。やっぱり僕よりオーディションに呼ばれる回数が多いので、チャンスがあっていいなあと。嫉妬があった時代は「このチャンスになんとかして!」と熱量が高すぎたなあと今になると思います。

      

中野:でも、選ばれるのもキャラがあるからだし、次にもつながっているんだろうね。

竹井:そうなんです。時々、監督のイメージのコンテが「これは俺じゃないだろ」ってときがあるのですが、自分以外が全員モデルさんだったりして、「何でおれも呼ばれているの?」みたいな(笑)。やっぱりそれでも呼んでいただくことはありがたくて、また別のときに声をかけてもらったりもします。

― 40代を迎え、下の世代がどんどんでてきていると思うのですが、そのあたりで思うことはありますか?

中野:たしかに30歳をボーダーラインと考える人が多くて、30歳をすぎると「あれ、周りに同じ年代がいないな」って思うんです。

竹井:そうですね、30をこえたくらいから「仕事」だとか「社会」というのが現実的になるのはわかる。それを押し通すことが大事ですね。

西ノ園:たしかに役者というのははじめからリスキーで、周りの理解がないとできない仕事でもあります。かつ、役者は演技に入ると一人かもしれませんが、そこまでの過程は決して一人ではないんですよ。事務所があってマネージャーがいて、いろんな協力と縁で続けられる仕事。まずはそこに感謝しながら、自分でも続けられる環境をつくらないといけないですね。

中野:感謝か?。この年代になるまで出来てなかったかもな。(笑) 今は事務所の社長兼任でやらせてもらってるから、身に染みてわかる。そんな俺が言ってきたからか、とくにうちのメンバー、若手もそれを分かってくれていると思うな。・・・たらいいな?。

西ノ園:20代前半の子たちは「ゆとり世代」などと呼ばれていますが、もちろん一概には言えなくて、いろんなタイプもいると思います。母校である日芸の授業でワークショップみたいなことに参加したりもするのですが、彼らは私たちの年代とはまったく感覚が違って、渡された台本を読むと、すごい!と思う部分もあります。ただ、もっと考えを言葉に出して欲しいな。

中野:言葉に出してほしいというのはわかりますね。若手がオーディションに行って、終わったあとに「どうだった?」と問いかけると、「無事に終わりました」「自分的には良かったです」「やりきりました」と言ってかえってくる。「いや、そうじゃなくて、相手はどんな反応だった?」と聞くと「わかりません」と答えるんです。それはオーディションではなく、ただ演技を披露しに行っただけ。受かる人は会場の雰囲気を応えられますから。こいつ周りを見ていたなと思うと、やっぱり仕事が来るんです。

竹井:オーディションで自分を客観視して、自分がどう見られているのか、何が求められているのかを理解するというのは大切なんですよね

 

「役者」として生きていくこと


―資格や基準のない「役者」という仕事ですが、ご自身で「自分は役者だ」と意識したターニングポイントなどはありますか?

竹井:20代後半、だいぶ上の先輩が「名乗ったもん勝ち」だって教えてくれたことがあるんです。「名乗った瞬間から意識が変わるよ」と言われても、そのときは「ふーん」なんて思っていたのですが、僕たちは個人で納める所得税額があるので確定申告をしますよね。そこに職業名を記入する欄があるのですが、アルバイトじゃなく「俳優業」と書いたんです。そうしたら覚悟ができるようになりましたから、やはり名乗るというのは大事なんだと思います。

西ノ園:そうそう、あの欄は、「俳優業」「アルバイト」とかいろいろ書けたらいいけど、スペースが小さくて1つの職業しか書けないんですよ。

中野:その中で「俳優業」をメインで書くということは、俳優業に一番収入がある!くらいじゃないといけない。そこで頑張るというのもあるでしょうね。役者としていただいている仕事で確定申告しているんだ、という自覚が生まれますから。

西ノ園:30代のうちは俳優をしてギャラをもらうっていうのに意識がいっているから、売上と考えないんです。でも、俳優なんて一人でやっている会社の社員ですから。そんな意識を持つと、自分が自分を支えないといけないと思えますね。野球選手のように一時期に輝きを放って身を引く方法もあるだろうし、引退のない職人だという考え方もありますよ。

―最後に、みなさんが出ている「踊る大捜査線」の見どころを一言づつお願いします

中野:僕と西ノ園くんは映画「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」「踊る大捜査線TV SPECIAL」の両方に出ていて、竹井さんは「踊る大走査線TV SPECIAL」の方にでています。竹井さんは警察側(警察庁)の人間で、事件のとっかかりの部分である犯人と直接やりとりする手前のところで出ています。マークしているのが織田裕二さん演じる青島刑事だという、かなり要の役ですよ。

竹井:僕はエリート官僚として呼んでいただきました。ただ、エリート官僚はシュッした感じなのに、僕?っていう違和感があって。佐伯新さんとコンビなのですが、僕らのことを見た織田さんに「あれ、…湾岸署っぽいよね」って言われました(笑)。

一同:大爆笑

西ノ園:「踊る1」でも同じ柳葉敏郎さん演じる室井に報告をするという役で出ているんです。ファイナルは、今まで関わった人に出て欲しいという本広監督の意向があってオファーをいただきました。僕と中野さんは同じ警視庁の一員として、柳葉敏郎さんや小栗旬くんらとずーっと一緒に出ています。全員東大出身という設定もすごいですよね。撮影中は2週間くらいずっと始発から終電というハードなスケジュールでした。NGが続いたりしたちょっと難しい雰囲気のときに1発で決めた時、織田さんが「ブラボー!」って言ってくれたのは嬉しかったですよ。

中野:まとめると、「踊る」は豪華なキャストがとにかく見ものでしょう!私たち三人がどこに出ているか、注意しながら見て欲しいですね。

―ありがとうございました!

 


 



編集後記

今回はPICK UP魂番外編。『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』に出ている方々に撮影秘話や役者としての様々な考えを伺った。
これまでの対談形式ではなく、彼ら役者が一度は通った下北沢の居酒屋での座談会形式で行い、役者として生きている方の生の声を少しでもお届けしたかったわけだが、いかがだっただろうか。
役者を続けていけている人は30代に比べ40代になるとグッと減る。
彼らのようにドラマ、映画、広告と幅広く活躍できている役者はなおさらだ。
この座談会で最も印象に残ったのが、若手の話で一番盛り上がったことだ。
個人事業主である役者という職業の人たちが、これからの世代と向き合い、育てることを楽しんでいることが実は結構意外であった。事務所社長でもある中野さんが手塩にかけて育てた若手が、実際に現場で結果を出したことをあれほど目を輝かせていたことがなんだかとても嬉しかった。

(役者魂 担当)

 

■役者情報

中野 剛(中野笑店)

中野笑店

西ノ園達大(オフィスPSC)

オフィスPSC

竹井亮介(イマジネイション)

イマジネイション

ピックアップ魂

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